羽毛布団が欲しいと売り場に来られた方は業者の方でない限り
何をもって良いものなのか全くわからない方が殆どです。
かつて私もこの「羽毛」の内容が難しすぎて必死に勉強しました。
なぜ難しいのか。各社によって製品が無限ということでしょう。
昔の話なので言えますが、座学が嫌いなもので・・・迷惑な話ですが工場に聞きに行くか、
他店の売り場に接客を受けに行って各店舗で何を売っているのか、
自社製品の違いは何かを肌身で学ぶことを心がけていました。
ある程度接客を受けてみるとそれなりに分かったことと、
大事にしなければならないことが二の次になっていることを知りました。
以前の話の中でも触れましたが、日本での羽毛布団の歴史は浅く。
そして布団と言うと「ゾクッ」とされる方もいらっしゃるかもしれません。
訪問販売や企業向け販売、はたまた販売会などで超高額の商品を
売っている企業もあるようですし、90年代には偽装の問題から国が動く事態にまで発展しました。
こういったことは少なくはなってきていると思われますが、布団は中身が見えないもの。
まだまだ値段が高ければ「イイもの」という概念が拭えないのだと思います。
確かにイイものはそれなりに値段はしますが、これは個人の尺度であって
「前は良いのを買ったんだけど・・・」と内容を聞いていくと
ダウンを使ったもの=イイもの という方もいらっしゃったりして
売り手に問題はありますが、本当に分かりにくいものなんだなぁっと痛感してしまいます。
もう一つ大事なこと。
「命をいただいているということ」を忘れてはいけません。
ウールとは羊の毛ですが、ご存知の通りこれは1度刈り取っても再び収穫が可能です。
また同じ毛が生えてくるからです。しかしダウンは同じことができません。
一度採取した羽毛は2度と生えてくることはなく、その水鳥も命を落としてしまいます。
基本的には「食の副産物」であるダウンなのですが、大切なことは何のために、
どの様に育てられているかの違いを知ることで雲泥の差が出ます。
羽毛布団のスペックの差が出ることを大まかに上げていくと
①羽毛の質・量
②側生地の素材
③側生地のキルトパターン
本当に大きい枠組みでいくとこうなのですが、
まず①について、ここについても非常にラフに話していきます。
ダウン or フェザー
ダウン…水鳥の胸の近辺のみに生える少量の放射状の羽毛 *高額
フェザー…ざっくりとダウン以外。軸状のファイバーを有する羽根状の羽毛 *安価
ダック or グース
ダック…雑食のアヒル *早熟型
グース…草食のガチョウ *晩生型
ここまでは基本です。
難しいのはここからです。
産地・ダウン率・充填量・ダウンパワー・羽毛タイプ・ダウン品質などなど
①の分類だけでも幅が多すぎて消費者には理解に苦しむものが多いです。
ただこの表記に出てこないものがあります。
「におい」
品質・暖かさ・耐久性・軽さなどは重要視されますが
においについては店頭で聞かれたことがほとんどありません。
大手通販サイトやテレビ通販などでは羽毛布団の売り上げを大きく伸ばしていますが
各社においについては一切触れません。
ではにおいについてなぜ羽毛独特の動物臭が出てしまうのかご説明します。
第一の原因は「エサ」です。
食の副産物と言いましたが、分かりやすく言うと「北京ダック」「フォアグラ」などです。
早く太らせて安定生産をする為に配合飼料が使われています。
人工飼料とも言いますが、輸送がしやすく、人工添加物を含有させることで
カビ・腐食などに強い飼料になります。現在世界中で使用されている飼料です。
特にダックは早ければ産まれて2、3ヶ月で食用として出荷されます。
未成熟で余分な脂肪を蓄えた個体は羽毛に有機性の汚れが残りやすく
洗浄したとしても取りきれないものが発生してしまうからです。
産地としては中国・西ヨーロッパ産の羽毛はこれに該当するものことが多いです。
対して東ヨーロッパ(ポーランド・ハンガリー)は元々水鳥の肉を食べる習慣もあり
国策事業として水鳥の飼育を管理し、穀物飼料の確保から品種改良・保全までを国が管理しているケースが多いです。
寒暖差の激しい気候の上、厳しい冬の寒さを耐え抜く羽毛としても有名で品質も良く、
希少な羽毛の取引がされているというわけなのです。
この2国は世界中の取引量の中で6〜7%しかない貴重な羽毛と言えます。
一概に言えませんが、中国や西ヨーロッパの中にも穀物飼料のみで倍以上の時間をかけ育てる農場もあります。
ただ流通としては多くないので国内大手の商品に採用されるケースは皆無だと思ってください。
対してグースは育成期間1〜2年が一般的。
中には品質維持のため卵を産ませる親鳥=マザーグース(4〜5年以上飼育)
という巨大なダウンボールを持つグースも存在します。
長くお話ししてしまいましたが、羽毛布団の世界はやはりわかりにくいものですし、
毎年流通価格により単価が変わってしまうので値段でもお話しができないもの。
当店では何種類かの羽毛布団をサンプルとして取り扱っておりますが、
配合飼料を与えより早く大きく育てる農場の羽毛は使用しておらず、
長く使っていただいても安心な品質の羽毛布団のみご提案いたします。
近年はマンションなどの集合住宅、また現代家屋の作りであれば木造でも機密性が高く、
エアコンの普及もあり冬でも10℃を下回る環境にならないご家庭が増えてきています。
その変わりと言ってはなんですが、充填量を軽量化することで価格を抑えます。
お客様の住寝環境を聞き取り、その方その方に合わせ最適・適正な商品をご提案いたします。
他にも最低限これ以上、以下というようなご予算でいただくことも可能です。
商品は信頼の置ける工場と直接取引することにより、中間マージンを除いた価格のご提示ができます。
作成期間はいただきますし、すぐに見積もりもご用意ができませんので不便ではありますが
長く使っていただくものになりますからそれなりのお時間は頂きたいと思っております。
国内では羽毛洗浄技術に特化した河田フェザーさんの「真羽毛」を使用したお布団のご用意もございます。
当然ハイランクではありますが、においのない安心してお使いいただける羽毛布団を
ぜひ寝具体験していただければと思います。 https://kwd.jp/index.php
*河田フェザーさんの工場には見学予定しております。
またどこかでご報告ができればと思います。
また逆に羽毛にお詳しい方もあると思いますので沢山のことをお聞きいただければと思います。
今度はまた②、③についてもご説明したいですし、ネットなどで自前の利益を削り販売をすることで
生産サイドを圧迫している現状にも触れてはいきたいですが・・・また追い追いということで。