また自らの話ばかりで非常に恐縮なのですが・・・
「普通の布団屋なんでしょ?」と言われてしまうとそうなのです。
ただ普通とは誰が決めた「普通」なのか?
これは私自身でいいと思っています。
当店は寝具の取り扱いだけに飽き足らず、
雑貨・バスリネン・パジャマなどを取り扱いしております。
パジャマは生地からオリジナルで作成していただいていますが
言ってしまえばこれも「普通」なのです。
その他の商品も多少なり在庫していたりするのですが
寝具類はお一人お一人の住環境やお使いの寝具の組み合わせによって
オススメするものが変わりますし、細かい仕様変更やサイズについても
まちまちですので当店の場合在庫していないのではなく
「在庫できない」
という表現が近いのです。
店の設計時にもストック機能を持たせていないため
寝具の倉庫というものがなく、「物理的に」ということもあります。
在庫置場が無い分、店内をゆったり使える様になりましたし
折角遠くからお越しいただくのですから、お茶でもしながらゆったり
寝具の体感ができるというのが理想としてあったからだと思います。
以前の経験からもう一つ大きな理由がありまして
これがあったからこの形態を選んだのかもしれません。
「在庫した商品を売らなくてはいけない」
という事実。
これは消費者にとってみれば全く関係のないことですし
店舗が自ら売れ筋を作り出すことや、メーカーサイドからの売り方の
提案というものもおそらく人が沢山いる店舗の運営方法だと思うので
当店には適応しないのではないかと考えています。
「売りたいものは何ですか?」と聞かれれば全ての商品をチョイスしている時点で
答えは「全部です」と言えます。
プラスして言うなれば寝具業界もメーカー応援ということがあり、
大手家電量販店の様にメーカーの人間が売り場に立って
自社の製品をお勧めするということは今でも往々としてあることです。
決してそれ自体が悪いわけではありませんし、
利益追求企業である限りある程度仕方のないことですが、
やはり売り手の身勝手だと思うのです。
当店はメーカー応援は行いませんし、行うほどの規模の寝具を扱っていません。
この寝具・着物・宝石などの「富の象徴」と言えばいいのでしょうか。
よくあるのは展示即売などの高額商品の販売会ですが、
そういった類の商品は扱いません。
実用寝具であって道具的な側面をもった商品が好きだからです。
それに加え店主ただ一人で運営しており、今後雇入れもしないつもりでいます。
「やりたい」と言われれば別ですが、そんなこと想定していないので
まずは普通の布団屋をやりたいと思っています。
この店舗を立ち上げた時に心に決めたのは
「私自身が消費者であることを忘れずに。」
それであって手を取り合えるメーカーと共存共栄のために何ができるのかを
新しい方法で模索していこうというのが最初でした。
2代目でも3代目でもない歴史のない、顧客のいない
ないない尽くしの私が布団屋をやると言い出すと
みんな決まって反対してくれましたし、逆に「面白い!」と言ってくれ
中には興味を持って応援してくれたメーカーさんもありました。
どこも同じこととは思いますが、寝具の世界は傾斜産業。
大手量販店の寝具・価格競争の激しいネット(モール)店に市場を喰われ、
大きく集客力のある所に頭が上がらない状態。
沢山の利益を出すには大きな企業の言うことを聞くしかない状況にあります。
昔はそれが百貨店だったのだと思いますが、現在は実店舗ではなさそうです。
寝具専門店や昔ながらの布団屋は軒並み廃業を余儀なくされていますし、
このまま行けば本当にいいものを作っている職人やそのメーカーまでも
いつかはじりじりと追いやられてしまう。
そんな寝具の世界が今後も「良いもの」を作りお届けできる環境を
微力ですが用意しておきたいのです。
それと現在世の中では
「明日届く」・「品切れをさせない」
より便利である事が当たり前であって「普通」です。
その裏に隠れている人間が何人いようが関わりのないことですし
皆が皆とは言いませんが、届いて当然という意識の中にありますから
もし時間通り荷物が届かないようなことがあればすぐにクレームになるでしょう。
それが当たり前だと言われれば当たり前なんでしょうが
こんなに多くの路線便が走っていて時間通り配達してもらえて
集荷にも来てもらえる国は他にはないのだと思っています。
これは国際的に考えて「普通」ではありません。
色んな考えはあるのだと思いますが、日本は世界的に見ても
配送システムに関しては異常なほどセンシティブな国だと思っています。
もう一つは品切れさせないということで「大量在庫」が当たり前です。
当店はオリジナル商品もさることながら、どの商品を取ってみても
大量生産品は1つもありません。どこまでをそう呼ぶのかということもありますが
「1点もの」と「大量生産品」の間。良いバランスの商品はなんなのか。
プロダクト商品であって価格と品質バランスの良いものを集めたお店。
そういった商品をセレクトしているので寝具のセレクトショップであることは
間違いありませんが、好んでそう名乗る訳でもありません。
大手の様に大きな売り場、在庫置場もない。かといって
大きなマーケットも持っていないので沢山のものも売れない。
必然的にこの選択肢しかないので「セレクト」をしている。
ここまでを総括して「究極に普通の布団屋」という言葉を使用しています。
「あ〜面倒くさいやつ!」と思われるでしょうが
寝具が好きだからこそ、本当に良いものが次世代にも残って欲しいです。
私がやらなくとも何も世の中は変わりませんし、大丈夫だと思うのですが、
あえてその世界に飛び込んでやる人間は他にはいないと思い店舗を立ち上げました。
布団はおそらく「民藝品」であって、昔から庶民に使用されて
流通をしているからこその「道具」としての素晴らしさと
見えないところにお金をかける「粋」という日本的な感覚。
この二つがマッチングする素晴らしいモノだと思っています。
この店舗を通して少しづつご紹介できればと思います。
寝具について語り出すと長いのでそろそろやめておきます。
毎度長文お読みいただきありがとうございます。