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2019/10/12 15:48

10月10日、店舗は臨時休業にしてある工場の見学に行ってきました。

扱う商品に関してはなるべく問屋を通さず直接お取引をお願いしております。
これはバイヤーだった時代から続けていることですが、
その際に必ず工場の見学をお願いしており、商品に関わる原料や性質、工程などを
私が理解するところから全ては始まるからだと思っています。
裏を返せば理解できないものを店の中に入れたくないということもあります。

これは関わる全ての方と気持ちの良い関係性を築くことでもありますし
不用意な悪意を持ち込まない抑止力にもなると考えています。
単にデスクワークが苦手なだけ・・・
まっ!いいです。

特にイワタのように歴史的な布団屋(製造小売)であり、
古くから原料・製法の研究に取り組み、独自規格などを有する
メーカーはすでに多くのファンを持っており、
全てを理解せずとも販売ができるものはあると思うのですが
そこは好奇心の方が勝ってしまうため、現場のご迷惑にならない程度に
商品や製法の勉強を兼ねて現場訪問を続けています。

という訳で今回は寝具御誂(おあつらえ)専門店IWATAとしても
有名な株式会社イワタの心臓部にお邪魔してまいりました。

イワタは京都三条に天保3年(1830年)布団店を構えます。
当時の綿布団は武家や貴族などの特権階級の方しか購入ができないほどの
金額であり、現在であれば約1〜2千万円ほどの超高級品だったのです。
綿は戦国時代より朝鮮半島や中国から輸入されていましたが、
やはり民間の中ではまだまだ麻や絹、楮(こうぞ)などの繊維が一般的で、
今の感覚からは全く理解できませんが、国産の綿花が広く栽培されてからも
高価で取引されており、それを中綿としてたっぷり使用した布団で寝れるなど
庶民にとっては夢のまた夢であったことに違いありません。

その頃の寝具といえば良ければ畳を積み上げただけのもの。
ほとんどが板の間に雑魚寝。
あればムシロやワラの中で寒さをしのぐのが一般的。
昭和に入ってからも木綿の側生地にワラを詰める藁布団は
農家が日本人口の8割を占めた時代であれば当然原料としては納得のできるもの。

戦後インドから綿の輸入が増え、安く入るようになってからも
「布団は家で作るもの」というイメージを持っている方もいらっしゃるほど。
布団屋で布団を買う方はそれでも恵まれた方であったという歴史があります。
そう、日本の寝具の歴史はまだまだ浅いのです。

京都では嫁入りに「蚊帳の西川、蒲団の岩田」と言い、
これを婚礼に持たせることがステータスであったようです。

余談)寝具で有名な西川は元々近江晒の問屋からスタートしており
   その後高級蚊帳を爆発的にヒットさせたところから
   寝具の歴史がスタートします。

話は戻り、イワタは滋賀県の山間に工場と研究施設を持っており
全ての製品をここで生産しています。
特に驚いたことが研究施設が工場とは別棟になっており
商品開発者とは別に2名の研究検査員が常駐しているということです。
これは日本のメーカーでもここだけだそうです。
研究所内し検査機械や製造機器など、ほとんど
写真は撮れませんでした。。企業秘密というものですね。
その管理もしっかりされています。



およそのメーカーは開発と研究の境がぼんやりしている場合が多いです。
私が以前属していた会社は寝具専門店の売り上げでトップであったのにも
関わらず研究施設など有しておらず、「必要がある際に外部に委託する」と
いうことしかできないメーカーが大半で一般的だと思います。
要は研究しても消費者には届かず、お金にならないということがその原因だと思います。

寝具機能・商品としては矛盾しているものの方が実は売れていたりします。
寝具専用掃除機のヒットなどはこの例に当てはまりますね。
これは実体験としても分かることなので、自社研究ができていて
会社が成り立っていることが本当にすごいことだと感じました。



イワタと言って何が出てくるかといえば「羽毛布団」でしょう。
羽毛の素晴らしさをいち早く見抜き、日本で初めて商品化したのはイワタです。
特に日本の風土・気候に合った素材選びと、
何と言っても検査規格がJIS規格の倍以上の工程で、
何を隠そう羽毛検査のJIS規格自体の基になっているのは
このイワタ規格です。当時の通産省の職員がこの研究施設に訪れ、
羽毛の規格に関して多くのデータを取って行ったそうです。

何がすごいかを一つ一つ話すとここでは書ききれません。
私も1日行っただけでメモ帳がいっぱいになり、新しい発見もありました。

この研究施設では羽毛・獣毛の原料や生地に至るまでをサンプルチェック。
特に偽装の多い羽毛はサンプルから一つ一つ8つの分類にして分け出し
本当にラベル通りの組成になっているのかチェックするのです。
生地は全て国産の特注生地でありますが、発注通りの通気性を満たさない
生地があるとその特定の1反だけでなくロットごと返品するそうです。
伝わりにくいと思いますがこれにはびっくりしました。
生地屋とのお付き合いも考えるとこの関係性が保てるということは
しっかりとした製品を作っているイワタに生地を提供したいという
メーカーなしにはおそらく成り立たないことだと思います。

縫製工場ではまず注文に沿って生地の裁断から行いますが
ここから違いました・・・
2人がかりで生地反を専用台の上に載せると、ここから
トイレットペーパーの様にくるくるとゆっくり引き出していき
何を始めたかと思えば陽の光を透かし、その方達の目を通しながら
生地傷や汚れ、他の繊維が入っていたりしないか確認していきます。
これには本当に驚きました。(画像なくすみません。。)
しかも感に頼るのではなく「このケースはダメ」というサンプル帳が
大きいファイル1冊にまとめられていおり、
意思を引き継ぐことでこの工場は長年規律を守られています。
職人一人一人の後ろに「IWATA」の看板があることを
皆が共有し、完全に把握しています。

研究所での生地チェックはサンプルのみで
反の始めの数メートル。全てはチェックできないので
人の目で一つ一つ生地からチェックしているのだとか。
不効率すぎて言葉も出ませんでした。
ただそのおかげでB品として戻ってくる製品はないのだとか。
一般的には製品で検品して納品前に弾くケースがほとんど。
彼らは生産の手間がかかりすぎるため、
生産時に使えない素材そのものから排除しようとしているのです。
全く逆の発想です。

それに加えOEKO-TEX classⅡをクリアしているため
生地に印を打つ際にもチャコペンなどは使えません。
全てアイロンでマーキングしていきます。

エコテックスをお知りなりたければこちら

このエコテックスをクリアさせるだけでも大変なのに
内容に羽毛・獣毛を含む製品でこの規格をクリアさせることはかなりの壁です。
300を超える薬物・金属・発ガン性物質などの有害物質が含まれていないか
原料・生地・糸と生産する道具に至るまでを調べていきます。
この手の日本規格は甘いので国際基準からはかなり遅れています。
その意味では政治的な香りがしますね。

縫製は全て日本人の地元の優秀な縫い子さんたちが集められており、
一般的には一つのレーンに役割の違う何種類かのミシンがあるのですが
これを1人1人自分の仕事ができたら次の方に回す。というやり方が
縫製工場では当たり前の風景です。

イワタの違う所は1人の縫い子さんが1商品の縫製終了まで
ミシンを渡り歩き完成させる完結型にあること。
工場長が1日全てを説明してくれたのですが、
「レーン作業の形態をとっていないので一つの商品に愛着が湧くでしょ?」
と当たり前の様に言っていたことにこちらは笑いが止まりません。
そんな見えないものを受け取れる消費者はおそらく1人もいません。
ただそれは使った方にしかわからない「耐久性」という形で現れます。



こんなにモノづくりに執着している会社を私は初めて見ました。
しかも縫針からドイツ製の縫跡が残りにくい針を使い
糸は綿糸で太番手のものをチョイス。縫い穴より糸が大きいことで
生地に食い込み穴が開きにくくなります。
現代の縫い糸はほとんどと言っていいですが「化繊」です。
これを綿糸にすると職人にとっては切れやすく、縫いにくい糸になり
技術も要するものなので今ではほとんど使いません。
全て効率化の陰に隠れていったやり方です。

こういった積み重ねが「IWATA」の商品を支えています。
当店もキャメルの敷き布団を取り扱いしておりますが、
ここまでに敷き布団のことがあまり書けませんでした。。
それについてはまたもう一度書きなおそうと思います。



きちんと商品のことを伝えたいということもありますが、
例えるなら水道水が蛇口から出ることが当たり前ではなく
水がどこから来てどう循環しているのか自らが確認して
「当たり前」を減らす作業をこれからも続けていこうと思っています。