私の主たる事業の中で寝具店とは別に子供服の販売という
仕事を生業の一つにしています。
当然私は店頭にいるので子供服屋に販売員として立つことはありませんし、
上長がちょくちょく来て言いたい事を言って帰るだけというのが
最悪な店舗だと思っているので私はあまり行かない様にしていますから。
本当に運営しているのかどうかと言うと不安なレベルです。笑
以前にチェーンストア形式の寝具店にて商品開発や
大手デベロッパーなどの新店開発として勤務した経験から
独立時に事業継承したいという方がいらっしゃったことで
この子供服販売事業にも取り組んでいます。
以前その会社でお世話になった恩師からのご相談であったので、
二つ返事で「やりたいです」と言ったのを覚えています。
ちなみにその恩師も会社から独立し、移動スーパーの運営をされています。
私が個人的に意識しているのは多数派(mass)に向けたビジネスと
少数派(niche)に向けたビジネスの両立と、そのバランスを取ること。
非常に貴重な経験になる。自身ではそう考えています。
ご依頼があった仕事に対してあまり断ることをしたくないので
恩師の「君なら向いていると思う」という言葉に背中を押されて
コロナや資金面など、いろいろな関門はありましたが、
昨年から今もこの運営を続けています。
様々な環境の従業員さんが働いてくれていますが、
現在は社員2名とパート・アルバイトが10名ほど所属してくれています。
先日新店舗にて欠員があり、アルバイトの募集をかけました。
こういった時期ですし、すぐに10名ほどの応募がありました。
その中で5名と面談のお約束をし、2週間ほどかけて面談を行った中に
16歳の通信制高校の生徒さんからの応募がありました。
個人的な内容なので、こういった所で書くのはどうかと思ったのですが、
先日も述べた通り私の記憶の整理という意味でも書き残しておきたいと思います。
弊社の募集の条件には「学歴・経験・年齢・職業不問、ダブルワークOK」
さらにはピアスや頭髪、ネイルなどもある程度自由ということにしていますし
話題のタトゥーについては文言で触れていませんが、
ご本人の人格を見れば採用において気になる所ではありません。
最終的に到達するのは一緒に働きたいか方かどうかという事と、
その方の持つ人間力が全てだと思っているからです。
ということもあり、弊社に応募が来るのは
通信制の高校に通う方、俗に言う中卒という方やシングルマザーの方など。
私も大きな意味で言うとそれに該当しますので、偏見も差別なく
「社会的弱者」と呼ばれる現代社会の根底を当然として受け入れています。
これ自体が問題ではありませんし、私はその社会構造の改革をできる訳でもありません。
ただ関わる人に対して相互影響を及ぼすことができる可能性に光を見ています。
元の話に戻ると、
その16歳の方は会った瞬間で22〜23歳の雰囲気でした。
しかし一度口を開くと安心するほどの16歳でした。笑
自身が16歳だったころに比べると、、、それよりは大分上回りますが、
要は「無知」ということが言葉としてぴったりでした。
面談は主に女性いう事もあり、いつもオープンな環境で行う事にしているので
モール内のコーヒー店でかしこまらずに行うのがいつものスタイルです。
今回の採用の結果を先に言うと、即採用で雇い入れすることができなかったのです。
渡された履歴書を見るとすかすかで、住所の間違いも二重線で消されています。
あまりこれ自体は気にならないのですが、さらには事前に聞いていた
アルバイト歴も記載がなく、志望動機もなく、こちらが質問しても
特段やりたい事などもなかったので一般的な履歴書の書き方を簡単に教えてから
不採用の理由とこのままでは難しいという話をしました。
彼女は肩を大きく落としてその場から動けない様子だったので
「飲み物はここで飲んで行っていいからね」と先に席を立ち店舗に帰りました。
しばらくすると店舗に戻ってきて
「諦められないのでもう一度チャンスをください。
ちゃんと履歴書を書いてきます。」
と泣きながら再面接を懇願されました。
側から見ると ーモール内で若い女の子を泣かせているおじさんー
という構図でしたので 笑
とりあえず店舗の前から離れてお話をしました。
私は「よっ!社長!」という方でもありませんし、
従業員さんには社長と呼ばれるのも嫌なので、みんな自然に汲み取ってくれているのか
「さん付け」で呼称してくれています。それが今のところ自然なのでそうしている程で。
こういった場面で職権を乱用して圧力などをかけるのもはっきり言って嫌いです。
ただ彼女に分かって欲しかったのは
『平等にチャンスは一度だけである』という事でした。
「心情を汲んで面談をしてあげる事も簡単だけど、
面接という事においては話は別で、みんな平等にチャンスは1回と決めている。」
という事を伝えました。
ただ書き直してくると言われた事には断る理由がないので
それは郵送でいただいてこちらからまたお返事しますと伝えると
その子は即答で「必ずここまでお持ちします。」と言う 笑
「ではお待ちしています。」と告げて、その場はお帰りになりました。
週明け店舗に行くと私宛に書き直した履歴書が届いており、
そこには一生懸命下書きした跡とピン留めされたメモに
「履歴書の書き方を教えてくれてありがとうございました。」
と書かれていました。
書き順も守らない拙い字でしたが、しっかりと気持ちは受け止めました。
「無知は悪」、「知識」と「経験」はさらなる「想像」を生み出し、
可能性の世界に連れて行ってくれるのだと
10代で田舎から出てきた私はそう恩師たちから教えてもらいました。
その頃の私もその子達と同じようにいわゆる無知でした。
不採用の理由を必死に正当化するわけではないですが 笑
チャンスだけは誰にも平等で、その次にとる「選択と行動」が
自身を変えられることのできる唯一の瞬間だと思うのです。
人生とは死ぬまでその選択の責任を取っている様なものだと考えています。
若い時分、私も彼女たちと同じくアパレルの販売員をやっていた頃に
先輩たちががんばって作ってきた店舗に一人で立つ事がありました。
そんなある日、先輩の顧客様がいらっしゃいました。
初めて接客を担当させていただくその顧客様は50代女性で教育者の方でした。
社会人になってからずっとコムデギャルソンでお買い物をされていた方で、
勝手にお買い物に慣れていらっしゃると思っていたので、今思えば店員とあるまじき行為ですが、
一頻りの接客が終わった後に母の様な優しさを持つその方に心を預けてある相談をしたのです。
「こんな力のない私にいろんなチャンスをくれる先輩たち。いつか恩返しがしたいんです。」
と私が言うと、
「そんな事しなくていいのよ。あなたが歳をとった時に
それは下の子たちに同じ事をしてあげればいいの。
そうやって時代はめぐっているのよ。」
と言い、その日も両手に抱えきれないほどのお洋服を買っていってくれました。
私はその言葉に助けられて今まで仕事を続けていく事ができました。
全ては「言葉の力」だと思っています。
私はこの女子高生の子に可能性を見たので履歴書のお礼のお電話で
少しだけですがお節介を焼きました。
今までやってきたアルバイトが路上での美容系アンケートと
電力会社のテレアポだという事を知っていたので、
「今までやってきたアルバイトに面接なかったでしょ?履歴書書いた事ないでしょ?」
と聞くと
「はい。友達の勧めで始めましたが今はやっていません」と言う。
私は
「分かりやすく言うと面接がない、履歴書が要らない仕事という事は誰でもいいということ。
ただうちは誰でもいいという訳ではない。あなたじゃいけない理由が欲しかった。
ただ面談も履歴書もそれが感じられなかった。今は雇えないけれども
もう少し成長した姿を持ってまた来てください。」
と告げると電話先ではすすり泣く声が聞こえて、そのままお電話を切りました。
「可能性に賭ける」「言葉の力を信じる」と言う意味で私は正しいジャッジができたか、
それは未来でないと分かりませんし、一生分からない事かもしれません。
ただ、コミュニケーションということで言うと「言わない優しさ」というのは
見えない凶器で「人の心に切り込む勇気が本当の優しさ」だと思っていますが、
その概念を知らない方だと時々狂気に満ちたやつだと勘違いされる事もあります。笑
私よりずっと年長の方には顔向けできませんが、
たった十数年生きてきただけの子たちにどう関われるのか。
どう影響できるのか。一生勉強ですし、これをこれからも
続けていきたいと強く思った出来事でした。
最近の若い者論争は嫌いなのですが、
若い方と関わると心が乾いた方がいらっしゃいます。
「ですよねー。」「なるほどー。」という過度な同調傾向を持つ方は
この部類にしっかり含まれると思うのですが、無責任極まりないです。
責任を取れる大人がいなくなった産物だと考えています。
使い捨ての社会で労働力としてこの社会を支えていく事を
理解できないことでストレスを抱えているのだと思います。
現状を受け入れて乗り越えていく事。これがチャレンジだという事。
使い捨ての社会から脱却し、まず先頭を切ってその姿を見せる事が
大人としての責任なのではないかと感じています。
今たくさんの事はできませんし、まだまだ理想とかけ離れたところにいます。
時限式の体が動くうちに多くの知識と経験を。
またそれに伴う想像のトレーニングを。
このままいくと「毎日に潤いを!」パッケージされた標語など
言いだしそうなのでそろそろやめておきます。