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2021/09/06 08:00

いつもこんなことを思っています。


仕事を依頼されて赴く地には何かあって。
向こうから「こっちへ来い」と呼ばれている気がして
深部で繋がりがあるように感じています。

ちょうど天から蜘蛛の糸をぶら下げられている様なものとお考え頂けると
分かりやすいのですが、追い込まれた私に選択権が無いように考えているのです。
いつもこの蜘蛛の糸に導かれて素晴らしい景色を体感できます。



寝具のご相談や納品をアウトプットとするなら
その後の旅はインプット。
共にバランスを保ちながら生活をする感覚を大切にしています。

私はもちろん仕事として行くわけで、
一応会社という形態を取っていますので、笑
利益を度外視した納品というわけにはいきません。

ベッドフレームや掛け布団などを含むフルセット納品の場合、
遠方であっても直接納品にお伺いさせていただいております。
*納品の寝具の詳細はこちらをご覧ください。

今回熊本での納品はスタートから私がやらかしてしまったこともあり、、
依頼主様にはご迷惑をおかけした訳ですが、今後は更生します!笑
*納品の詳細はこちらで。




さて、今回のツアーは納品を終えた熊本からスタートして
まずどこをゴールにするかということを考えていました。
最初は南下して鹿児島まで行こうかなと思っていましたが、
尾道に面白いホテルがあると聞いていたので少しづつ北上しながらも
最終目的地は広島県尾道市にすることに決まりました。



北上するその沿線に愛知県から福岡県八女市に移住した知り合いで、
お茶を育てながら染色や陶芸をやっている友人がいたので
その制作拠点にもお邪魔することにしました。

実はその友人は以前働いていた職場の同僚で、
私の後から入ってきた後輩だったのですが、
今でも一緒にお話をする以前の職場の先輩や同僚たちとともに
食事をしていた際になんとなくそのことは聞いていたのでずっと気になっていました。
この件が決まり、すぐに連絡をとってなんとなくそちらに向かうことのみは伝え
行き方や付近での過ごし方は直前に決めるものとしました。
*詳しくは 〜その2〜 で書きます。

この旅の中ではクライアントさんの自宅を設計した
矢橋徹さんという建築家さんとの出会いが大きかったです。
今回はご依頼主からのご好意をいただき矢橋さんをご紹介いただいたき
一緒にお食事をさせていただきましたが、とてもいい方でびっくりしました。


納品前から矢橋さんのHPで設計事例を見ていると
素材を大切にされていること。
あれこれ付け足したデコラティブなものをなるべく排除し、
線や色を減らした設計がとても心地よいものが多く。
もちろん今回ご相談頂いた方のおうちも隅々までご紹介いただいたのですが、
かなり格好がよく、個人的にはとても好きな建築だったのです。

そこでお会いしていた際に気になっていたことを全てぶつけます。
屋根については簡素なガルバリウムの波板を使用されていたので
これについてはワザとですか?とお伺いしました。

「一般の施主さんは嫌がる方が多いが、優れた素材なので
今回は全てお任せされたのでまず屋根はこれを使うことを決めました。」っと仰る。

まさか施主さんは寝具だけでなく、家に関しても全て矢橋さんにお任せしたのだとか。。
一生のお買い物である 家についてもまさか全てお任せしているとは・・・
カウンターでお寿司やてんぷらを食べるのと訳が違いますから
なんと器の大きい方なんだと再度驚きました。笑

その際またお決まりの「餅は餅屋ですから」っとおっしゃっていました。

正直ここからはお好きな方にしかご興味のない事かもしれません・・・
矢橋さんの事で私がもう一つ気になっていた事で、
「ドナルド・ジャッドという芸術家がお好きなのでは?」という事についても
私の予想は当たっていました。



私はピーター・ズントーというスイスの建築家の作品について
書籍やネット上の画像で感動し、その事もお伝えしてみると、、
やはりスイスで建築を直接見た事があると言われるので
本職の方に聞くのは愚問かもしれませんが、
その他にも好きな方がいらっしゃらないかお聞きしてしまいました。

2021年のプリツカー賞を受賞したラカトン&ヴァッサルという
建築家デュオを教えていただきました。



波板のようなかなり簡素な素材を使用する方だそうで、
こういった庶民的素材を使用する建築がプリツカー賞を受賞した事を
とても嬉しく思うとおっしゃっていました。
建築界もエリートと非エリート、要はキャリア対ノンキャリという
社会の縮図があって、どうしてもエリートが優ってしまうのだそうです。
この方達の書籍があるかどうかをお伺いし、公式なものは無いものの
ELcroquisというスペインのシリーズで特集されている事を教えていただき
その夜ホテルに帰ってからすぐにポチっとさせていただきました。
*店舗に帰ってから隅々まで見るとやはり私も好きな建築でした。





最後に握手をして、お別れをした後に直接メールをいただき、
スイスで見るべき建築をマップ付きで全て送っていただきました。
その他にもピーター・メルクリ、ヴァレリオ・オルジャティなど
お好きな建築家を教えていただいたので少しづつ勉強していこうと思います。




私も「餅は餅屋」と思っていますので、プロに聞くのが一番っと思っています。
かなり話し易く、知らないことも分かり易く教えていただけました。
もしお近くでお家を建てたり、リノベーションをされるという方があれば
ぜひお勧めしたい若手建築家さんです。
*ご年齢は私より年上の方です。

広島の福山にあるUIDさんという建築事務所で修行されていた様で
修行時代の話なども少しお伺いすることができました。
建築家の修行時代は丁稚奉公の様に今でもかなりの低給で働いていらっしゃる方が多く、
「やはりそうでしたか?」とお伺いすると私の想像の上を行っていました 笑


*余談ですが道中、同建築事務所(UID)のデザインのホロコースト記念館にもお邪魔しました。


私も愛知に来てからはそこそこに貧乏暮らしを経験しましたが 笑
この業界の方々はそれ以上の苦労をされています。
将来有望なお若い方で低給や無給で修行されていらっしゃる方が
これを見ていらっしゃる様でしたら「あなただけじゃないよ」
と勇気づけてあげたいと思います。
この現代では全てを肯定できる状況ではないですが、
若い時に苦労する事が確定していまう業界ながらも
夢のために頑張っていらっしゃる方々もまだまだいらっしゃる事と想像します。

ただ、将来のために「現状を諦める」ということも容易にあることと想像しますし、
それをどこで諦めて現実的な仕事に就くことが正解か不正解かなんて誰も分かりません。
全てが最善の判断だと思って目の前のものに一生懸命であればそれで良いのだと思います。
「やりたい事」「できる事」「世に求められている事」のバランスは
私も含め、なかなか自らの願望通りにはいかないものなのだと思います。

分かり易い話をすると我々は「売れない芸人さん」と一緒です。
テレビに出たいのか、劇場に出たいのか、芸人でありながら他の才を生かすのか、
いろんなタイプの人が存在します。何を持って成功かなんてそれぞれにしか分かりませんし、
そもそもメジャーで成功したくて芸人をやっている訳ではない方もいらっしゃる訳です。
自分が満足したいのか、他人を幸せにしたいのか、そのどちらも。ということもあるでしょう。
どこで区切りをつけるかという中で、こういった世界を去っていた方々を今までたくさん見てきました。
私もすでに何かを大成した訳ではありませんし、今でもその崖っぷちに立たされている訳ですので 笑
大きなことは言えませんが、

ただ一つ。「創造」ということに関して言うのであれば
「リスクを背負っていないものに美しさは出せない」ということを思っています。
命尽きるまで創造的渇きを癒すことをずっと続けている人や物に魅力を感じ、
その物理的距離感や外見は関係なく「好き」と言える間柄になるのだと思います。
絶対的にそうでなければならないという事ではないので
それ以外の考えをを否定したり排除したりはしませんが、
なぜか好きな人の共通項がこの「リスクと友達」ということなのです。

矢橋さんも勝手にそうだと思ったのですが、やはり「リスク」と引き換えに
新しい感覚を創造されている方なのだという事がわかりました。
今回のご依頼主さんについても私からあまり多くはお話しできませんが、
同様にまた別の世界で自らの世界を切り開いている方でした。
素敵な方との出会いが私の人格や考え方に影響を与えている事は言うまでもありません。



そして翌日。依頼主さんが八女の近くまで送ってくれることになり、
その言葉に甘えに甘えて午前中は熊本市内を見て回ることにしました。

時間も限られていたので泊まったホテルからあまり遠くには行けなかったものの
熊本城近くになる熊本伝統工芸館に行き歴史ある熊本の街で息づいた文化や
手仕事などを見させていただきました。
その中で木葉猿(このはざる)という焼物を見つけました。
後に調べると1200年続く置物で、独特の色使いや
土の手触り感の残るなんとも言えない表情にやられました。



帰ってから早速窯元さんにお電話をして店頭でも扱える様にお願いしました。
こういったときの図々しさは自身でもびっくりしますが、
見たときの衝撃や感動をどうしても伝えたくなってしまうのです。

永田禮三(ながたれいぞう)さんという窯元の7代目で
木葉猿を継承しているのはここ1軒になってしまった様です。
永田さんご本人がお電話口で対応いただき布団屋と告げると
言葉が出てこない間がありましたがなんとか分かっていただくことができました。
木葉猿について楽しそうにお話しされていたのが印象的でした。
次回は永田さんの工房も訪れてみたいものです。
入荷しましたらHPなどでご紹介していきます。



熊本は同じエリアに古着屋さんが乱立していたり、
食事の面でも全く困ることが無いほど美味しいお店が
たくさんあってこの状況でも個人店が元気な印象です。

愛知では残念ながらあまりそういった文化が無いように思います。
全くいないという訳ではないですが、、メインストリームに対しての
カウンターの様な存在は人口の割に少なく感じます。
恐らく歴史に何かあるはずと思っていますが、これはまた別の機会に。

人は理解できないものや、自感覚の領域を超えた際には恐怖を感じ、
回避行動に出るというのが当たり前の事です。
ただ時間の経過によって少しづつ多くの人に認められたもの。
また共感覚によって同調するというのが残念ながら集団心理なのだと思います。
他の人の持っているものと同じものが欲しいという感覚と、
世でまだ評価されていないものが欲しいという感覚は言うまでもなく両極にあります。
おそらく感覚的には後者です。
訪れた熊本では肩書きの無い店舗や一見何を生業にしているのか
全く分からない人たちが多く、大らかでとても元気なのです。
それを支えていく地域社会や小さなコミュニティーが多い様で、
九州全体に言えることですが非常に豊かな印象です。
比較的中央経済から遠く、経済的に都会と離れずともいい距離感にある街は
こういったいい匂いがする街が多い様な印象を持っています。

それぞれに特色を持った街がこの日本にはたくさんあります。
まだまだたどり着いていない場所もたくさんありますし、
旅行するだけでは分かりません。
私は必ず名物を見に行くこということもありませんが、
図々しい性格も影響しています 笑 
さも住んでいるかの様に馴染んで歩き回るというのがお勧めです。
その為にに1日10km〜20kmはとにかく歩きます。
*ヨーロッパの旅では私もびっくりしましたが1日30kmを歩いた日もありました。

ガイドブックは見ませんし、気になったところでコミュニケーションして
教えてもらった場所にどんどん行ってみるというのが楽しくて仕方ありません。
実は熊本伝統工芸館も今回のクライアントさんに教えていただいた場所でした。
私一人では到底たどりつけない場所に何かはきっとあるものです。

今回もまた、同じ様な経験をしました。
そして〜その2〜では奥八女から尾道の旅を記録しておこうと思います。

奥八女も時間軸が飛んでいていいところでした。
次回がいつ書けるか分かりませんが、、、笑
お楽しみに。


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