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2021/12/22 13:40

今回のご相談は以前にマットレスのご相談をいただき、

納品させていただいたお客様より羽毛布団リフォームのご依頼でした。

ご新居へのお引越しに伴い、ご実家からお持ちになった羽毛布団で
状態を見させていただくとかなりいいものだったのですが、
過去にリフォームをした形跡のある羽毛布団でした。
以前の詳細は分からないので少なくとも今回で2度目のリフォームになります。
その上でリフォームが可能かどうかは現物の羽毛を見ないと分からないのですが、
今回の例でいけば羽毛の状態は可能なものでした。

・受け取り状態

生地:コットン100%
   (80番サテン 4×5 立体20マス)
充填羽毛: 不明  *羽毛ちぎれが少ない状態
   (内容はグースダウンですが、産地・ランクとも混率不明)
充填量: 1.4kg

画像を残し忘れたのですが、かなり綺麗な状態でした。
リフォームから既に20年ほどが経過している模様です。
お伺いするとお客様のお母様が寝具がお好きだったようで、
地元のしっかりとしたお布団屋さんでリフォームをご依頼されていたようです。

元々寝具のご相談があった際にもかなり睡眠の質が悪く、
筋肉のダメージもあった状態でしたので、
マットレスから少しづつ改善していき最後は羽毛布団を。
という内容だったのですが
「寝汗がひどく、羽毛布団が暑すぎて起きてしまう。」とのことでした。



話は変わりますが、羽毛布団は日本で30〜40年前に定着して市民権を得ました。
綿や羊毛の重い日本の布団が主流だった時代から急激に進化した訳です。
ただ当時は価格も安定せず、情報もなかったためかなり高価な羽毛布団を
買っていらっしゃった方が多い印象です。

工業製品化してからは価格は安定しましたが、偽装の問題があり
日本政府から自主機関での規格統一の動きがあり設立したのが
日本羽毛製品協同組合(日羽協)という団体です。
70年代後半、国内に参考になる企業がまだ少なく旧通商産業相が参考にしたのは
当時から独自規格で国内で羽毛布団を生産していた京都のイワタ蒲団でした。
当店ではキャメルパッドの印象が強いのですが、今でも羽毛処理の独自規格を
持っており一般のメーカーとは一線を画すものづくりを続けています。



皆さんが目にするところでお話しするとTV通販などで目にする
「エクセルゴールドラベルッ!!」というものを発行する機関です。


主には多種多様な羽毛のランクを統一するということと、
同業種内での統制を計る為の機関ですので各企業から
出向で役員や理事が選出されています。
この日羽協の指針が日本の羽毛布団を先導していますので
西川などを含む大手寝具メーカーはこの基準に則り製品を生産しています。

当店も少なからずその恩恵に預かっている状態だと思うのですが、
気候の変化や、建築基準改定などにより日本人の居住環境はこの50年で
目紛しく変化を遂げています。しかし羽毛布団は大した進化がありません。
消費者目線で見ても充填するの「ダウン」を重視した商品が多く、
当店が大切にしている「生地」が注目されることはこれからも少ないのだと思います。



特に問題なのは気密性の高い住居が増えており、家屋の機能や
保温性能も優れていますし、中には床暖房や全館空調などを備えた
ご自宅にお住いの方も多少ですが増えてきた印象です。

その中で考えると羽毛布団の進化がないということと、
ご依頼主の様に、新築物件にお住いで今まで使っていたお布団が
オーバースペック状態であることはなかなか気付きません。

分かり易くその状況をお伝えすると。
エベレストに登る装備で富士山を登っているイメージです。

よく考えれば「重いし、暑いし、蒸れる」
この状態で睡眠中のおよそ8時間を過ごす訳ですから
今回のご依頼主の様に悩まれている方も多いのではと思っています。

朝になって羽毛布団を蹴ってしまい、「寒いっ!!」っと起きてしまう方の
ほとんどがこういった羽毛布団のオーバースペックが生み出す「蒸れ」によって
引き起こされる真冬の寝具トラブルだと考えています。

一般的にシングルロングサイズの羽毛布団に充填するダウンは1.3〜1.4kg。
お布団屋さんによっては1.5kgや1.6kgなどのとんでもない商品も存在します。
特にスパルタンな印象を出すためにわざとマチを低くして
羽毛布団のキルトに盛り上がりを作り出すメーカーもあります。
厚みが厚ければ良いというものでもないということを覚えておいてください。
お部屋が機密状態であればダウンが本来の能力を出しづらくなるだけでなく
羽毛自体が摩擦して耐久性に欠ける商品になってしまいます。

これは全てパフォーマンスであって、ご使用になる方の買った後のことを
想像した商品ではないということを予め話しておきます。
当店では素材や羽毛ランクに合わせて1.0〜1.3kg程に調節しています。
特に環境に合わせて1枚1枚生産していますので充填量を自由に変えることができます。

羽毛の過充填ともう一つの原因は「生地の加工」にあります。
現在の基準では生地の生産にあたって「ダウンプルーフ」(ダンプ加工)という
目潰し加工が施されてしまいます。これは日本独自の規格です。
私も企業に属していた時は至極当たり前だと思っていたものが、
起業してヨーロッパに行ってみると樹脂プルーフ自体が全く無かったのです。



当然「なぜ?」っとなりましたが、以前から言う通り日本は「クレームの国」です。
クレームを避ける為に企業側が先回りして製品にその加工を施すことが
良い悪いは別として、当たり前の通念として共有されています。

「羽毛布団の蒸れ」というものと戦う時に海外で見つけたのは
「バティスト」という超細番手の単糸を使用した平織り素材です。
軽く丈夫で通気性があります。通気性を失う為、当然ダンプ加工もありません。



ダウンは元々たくさんの水蒸気を吸ってくれて「調温・調湿」に優れた素材です。
生地に通気性がないと暖かくなるだけのただの暖房装置になってしまいます。
ヨーロッパで感じたのは「素材」の特性をよく知っていて、その扱い方が
実に原始的であり、市民レベルでも「許容と融通」という概念が全く日本と異なります。

昨年あるお客様から「通年使用できる羽毛布団はないものか?」
という課題をいただいた時に一番に思いついたのはこのバティストを日本で探すことでした。
寝具もアパレルの様に同じ織り機で生産をしますが、精密に言うと同じ機械ではありません。
アパレルは生地幅が130〜150cm幅で生産されるものが多いのですが、
寝具はシングルの掛け布団で150cmあるので縫い代を含むと160〜170cmの
生地幅が必要となります。特に寝具の生地生産は特殊で専門化されています。
この全てにダンプ加工が施されていて、ダンプのないものを探すと
到底寝具になり得ないような安価な生地のみ。この現実に愕然としました。



ある程度の生産ロッドを持ってこんな小さな個店が生地を独自生産するしか方法は無かったのです。
通気性の高いダンプのない生地を生産するため、昨年店主はある覚悟をしました。
50mの生地反を3本。150m分の生産を依頼することにしたのです。
布団で換算するとSL30枚〜35枚ほど。笑
金額にしても300万円弱。店主はビビりました。笑

メーカーさんには多大なご協力とご理解をいただき、
数年かけてこの生地を普及していくことを許容していただけました。
新しいことをやるという時にこういった仲間の協力は欠かせません。
当店は工場さんやメーカーさん。関わる全ての方において支えられて成り立っています。
当然この羽毛布団をお買い上げ頂くお客様に至るまで。
全てが同じ幸福感と価値観の上に横並びになることを理想としています。
その為の生地作成に踏み切ることにしました。



それから約1年。
リフォームにおいてもこのバティスト生地を使用できるまでになりました。
今回出来上がったのがこちらの羽毛布団です。





お客様に使用後の状況をお聞きすると
蒸れと余計な暑さがなくなり、ぐっすり眠れるようになったようで
感謝のお言葉をいただいたのですが、本当に感謝したいのはこちらの方です。

こういったチャレンジにご理解をいただき、そのお代金をいただいているのですから。
決してお安いものでもないですし、分かり易く機能性が伝わるものでもない。
特に当店が販促やコマーシャルを行っている訳でもないので言ってみれば
未知への投資になる訳です。そんな決断をさせてしまう私の現状も
お客様へは申し訳なく思いますが、これからも探究心の赴くままに。
これからも活動を続けさせていただきます。


・お渡しの商品

生地:コットン100%
   (100番単糸平織り 5×6 立体HMキルト30マス)
充填羽毛: ウクライナ産 ホワイトグースダウン 93% 400g足し羽毛
   (内容はグースダウンですが、産地・ランクとも混率不明)
充填量: 1.3kg 仕上げ

費用: 70,400円 税込

生地が軽くなってキルトも細かくなりましたので
体に沿い易く掛け心地が上がったので羽毛の量を減らすことにしました。
1.4kg→1.3kgへ減量して現在の居住環境に合わせました。

羽毛布団リフォームのご相談はできることが多岐に及ぶことと、
お作りになるお布団の方向性を決める為に使用者の環境聞き取りが第一になります。
ご来店だけでなく、お電話・メール・Zoomなどでもお伺いいたします。
ご依頼はお手数ですがご予約をお願いいたします。
お近くの方であればご自宅にお伺いしての出張引き取りも可能です。
詳細はお問い合わせください。よろしくお願いいたします。

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