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2022/08/07 12:33

今年もやはり暑くなりました。

ここ数年の地方の暑さ自慢もなんだか見慣れてきましたよね。笑 


また線状降水帯などの気象用語をよく耳にする様になりました。

日本一帯の水域にて海水温が上昇していたり、潮目が変わったりと

気象変動のニュースを見ていると、これはもはやスコールでは?と思います。

この状態は東南アジア諸国と同じくして、日本も亜熱帯化してきているのではと思うほどです。


寝具では20年前ほどから夏の寝具は冷感商品がこの季節の定番となり、

竹シーツやジェルパッドから始まり、10年前ほどで接触冷感寝具と変わっていき、

ここ数年はPCMなどのハイテク素材も寝具に導入されるまでになりました。


しかし、当店には夏の暑さを凌ぐ寝具は一切ありません。

なぜか、、

現代の接触冷感性の寝具のほとんどは化繊でできています。

私は化学繊維が嫌いなわけでなく、、睡眠を軸にする寝具には向かない繊維だと思っています。

スポーツや過酷な環境下で使用するアイテムには化繊は最適な素材です。

時間の経過と持続というものを含んだ寝具には天然繊維が向いていると考えています。



冷感寝具の一部キャプラなどの天然由来の繊維を使用する場合もありますが、

コスト面からナイロンやレーヨン、またポリエチレンが多く、

基本的には汗や水蒸気を吸いにくいものです。要は、冷たいのはその時だけ。

就寝後の8時間は蒸れが起こりやすく、冷房による寝冷えや

蒸れによる不眠というリスクに晒されてしまいます。


私もいつかはそんな寝具を主導して作っている立場にありましたが、

ヨーロッパへ行きのウールベッドパッドを買って使ってみると

全ての概念がぐるっと覆されてしまって、この感動を他の方にも知って欲しいと思い取り扱いを開始しました。

すでに導入していただいたお客様からのお声も意外にも冬ではなく夏にやってくるのです。



「ウールって夏でも大丈夫なんですね。びっくりしました。」

とこれはよく言われます。寝具のご説明をする際にお伝えはするものの、

言葉より体感していただいた際の衝撃は他と比べることもできません。


しかし、日本ではベッドパッドが主流ではありません。

今でもマットレスを汚さない様にするものとの認識が強く、

専門店に行っても正しい使い方を話せる方は少ないです。

なぜならベッドパッドがシーツの上に出てきている、

「敷きパッド」なるものが季節性寝具の主流になっているからです。

商品名は言えませんが、〇〇クールなどです。

生産枚数を考えるとおそらくかなりの数のお宅にあると思います。


そもそもこの「敷パッド」をなぜ使うのか不思議に思われた方はいませんか?

私はこれを作りながらも不思議でした。なぜこんなにも売れるのか、、、

毎年何千枚の商談を海外の工場とやり取りしながら作っていましたが、

謎で仕方なかったので、まずこの寝具の歴史を調べることからスタートしました。


おそらく敷パッドは日本だけの文化です。一部アジアにも飛び火していますが、

アジア諸国の寝具は陸続きでもあるし、歴史上植民地であったケースが多いので

ヨーロッパに影響を受けています。寝室の文化は実はヨーロッパ式なんです。

中国もそうですね。建築様式などを見てもヨーロッパへの憧れが強いようです。


対して日本の近代寝具はアメリカの影響を濃く受けていて、

ベッドパッド自体の意味が不確定で、結局は正しい概念が根付いていないのです。

最近のスプリングマットレスはマットレスの中にベッドパッドが内蔵されたものも

出てきており、もはやパッドの役割をなしていない機種まであります。

天然繊維を入れただけでは話になりません。メーカー側の単価を上げたい意図が見え隠れします。


ベッドパッドが独自に発展したのが日本の敷パッドなので、

そもそもの役割を話せる人が居なくなってしまったのだと思います。


話は元に戻りまして、、

ベッドパッドとはなんぞ。ということですが、

これは人間の睡眠を守るもので、マットレスを守るものではありません。



そしてなぜ夏にウールがいいのかこれを説明しましょう。

その前に!!敷パッドやベッドパッドを購入される際に

「ここだけ見て欲しいっ!」というポイントを言うと、、、

実は内容物の「中綿」です!!



何度も言いますが、敷寝具は中身の純度と密度が非常に重要になります。

人が寝て、半日を過ごし、重力に派生する圧力にも耐えるもの。

また、人の主成分である水分を素早く吸い取り、

皮膚を清潔に保つものが必要になります。


中綿が化繊であるということは熟睡を支える寝具としては致命的です。

また熱によって水蒸気になった水分をしっかり吸うものを選定する必要があります。


まずはコットンやリネン、ラミーなどの植物性繊維の中綿です。

コストも専門的な寝具の中では割と良心的なものです。

当店でいうとパシーマやイワタの麻パッドになりますね。


もう一つようやく本題に入ると動物性繊維の中綿、ウールやキャメルになります。

しっかり水を吸うだけでなく、温度と湿度をコントロールして

人間が一番過ごしやすい環境を作ってくれます。




暑くもなく、寒くもなくちょうど良い。

動物性繊維はそんな環境を作り出してくれるのです。

ただ寝るだけでなく、熟睡する為にはここまでの準備が必要になります。


「そんな寝具要らんよ」と言われればそこまでですが、

当店の寝具を導入いただく中で、多くの方がびっくりするのはこのウールパッドです。


ただウールと聞いてなんかむず痒くなったり

夏は暑いのでは??と思われる方の方が多いでしょう。

それも当然。。日本製のウール製品には先程あげた様な効果はありません。

「どういうこと??」と思われるかもしれませんね。

同じウールで何が違うのか??


まず日本製品の性質のお話をしておきます。

よく「寝具の進んだ国ってどこ??」って聞かれるのですが、

私はですが、間違いなく日本と答えます。

んじゃなんで寝具を海外から仕入れているか。それをご説明しますね。


日本は加工大国。化繊加工やウレタン加工の生産能力においては

世界トップランクだと思います。しかもぶっちぎりです。


今回のテーマのウールをとってみても、日本は防縮や毛玉防止のために

塩素などでウールのカールやキューティクルを取ってしまいます。

ウール独特の臭いや牧草の乾いた香りというのも日本市場では邪魔な存在です。

また、国内ではピュアウールと呼ばれる真っ白なウールじゃないと売れないので

ついでに漂白や不純物処理もできるように薬剤加工をかけてしまいます。

どこがピュアなんだと思いますが。。もはや天然素材であっても

加工済みのウールは調温調湿性においては劣るウールになってしまいますし、

本来あるべきの天然の抗菌成分も同時に失ってしまいます。



すごくマニアックなことまで言えば、

日本で使用するウールはオーストラリアやニュージーランドなどのオセアニア原産のメリノウール。

メリノは元々クリンプと呼ばれる縮れが少なく、ほぼストレートで、

ミクロン数の細い柔らかいウールが主流となってしまいます。

このメリノというのは人工交配された品種で人間が作り出した品種です。



現代の羊は16〜17世紀に日の沈まぬ国と言われたスペインがその起源と言われています。

そこからイギリスに渡り、当時植民地であったオーストラリアにたった8頭のメリノ種が渡って

200年ほどをかけてあれだけの頭数にまで増えているというのが現状です。


紀元前7000年、古代まで遡ると中東が羊の原種となるムフロンというヤギに近い生物などから

交配を繰り返して今の羊に近いものが取れるようになったと考えられています。



中東の敷物にはウールが使われており、紡織から染色、加工に至るまで。

高い技術があったと考えられます。ペルシャ絨毯は有名ですよね。

シルクもここから発信されていますが、古代メソポタミア文明も店主は気になるところです。


これがシルクロードを渡りヨーロッパ各国や、東に渡って日本にも入ってきたことになります。

安土桃山時代まで羊は中国の干支を通して知られていたようですが、

麒麟と同じように空想上の動物として描かれていたようですね。

これが同じ16世紀です 笑

世界から見ると日本では約8000年遅れでウールが登場しますから、、、

その理解や歴史や文化に関しては全く知識が見聞として広がらないはずです。


これもご存知ないかもしれませんが、原産国として有名なオーストラリアにはそもそも羊はいなかったのです。

主にメリノ種は衣料品などの衣服用の素材となります。柔らかく、扱いがし易い代わりに

クッション性も弱く、敷寝具に使用するウールパッド向きでは無いのです。


ではヨーロッパの寝具は?と聞かれた時に分かりやすく言うと

超原始的な寝具と答えます。人間が介する加工も少なく、

素材に頼りっきりのシンプルな構造をとっているものが多いのです。

刈り込んでから必要最低限の中性洗剤と水洗いのみで中綿に使用します。

表面に付いたままのラノリンという油分は天然の抗菌成分を持っており

細菌性の臭いを防いでくれ、清潔に保ってくれる役割を持っています。

牧草なども入ったままになりますが、これが本物のウールなのです。

ヨーロッパの品種は山に住む高原種が多く、オセアニアのような平原種ではありません。

元々その地域に住んでいる羊の原種に近い、クリンプの強い剛毛のウールを使用します。

まず商社を通してもこんな原料は日本には入ってきません。


だからわざわざ製品を仕入れしています。

当然日本にはそんな羊もいませんし、素材がないんですよ。


その昔、ヨーロッパの羊を大手の商社が同じくらいの緯度だからといって

北海道で育てたことがあるらしいのですが、3ヶ月ほどで直毛になったと言います。

推測ですが、、おそらく羊の毛の硬さには羊の飲む水の硬度が関係するのでは。

っという仮説を立てています。


素材のことを分かり易く言うと、、

家具に例えるとウレタン塗装のない、無塗装無垢の素材を使用した

家具に近い感覚だと捉えていただければ良いと思います。

しかも乾燥方法も人工乾燥ではなく、天然乾燥です 笑



ここまで来るとほとんどの方が振り落とされているでしょうから

この辺りまで読んでいただけている方は恐らく同じ感覚を持った方々

だと理解しています。その上で続けると、、


その意味で言うとほとんどの日本人は本当のウールの性能を全く知らないという事になります。

欲しくとも売ってないですし、そもそもそんなものは沢山売れませんから

我々のようなちょっと話を聞くのが面倒な専門店で細々と売られています 笑

少々卑屈かもしれませんが、この寝具の市場規模から言うと

我々の様な天然素材を主要にする寝具店に市民権はないのだと思っています。


当店が遠方からご依頼をいただく理由はここでしょうね。

欲しくともどこにも売ってないということにずばり集約されます。

費用対効果を見ても売れないものは大手企業では取り扱えないですからね。


この夏の暑さのなかで気温と湿度をコントロールして快適な環境を作り、

熟睡を生み出すのは動物性繊維を使用した実はベッドパッドです。

まずお手頃なのがウールですので、当店で言えばドイツ製のビラベック社のベッドパッドか、

オーストリア製のリラックス社のベッドパッドでしょう。


先日うちの子供がマインクラフトというゲームで、せこせこ理想の家を作っていて、

私が「ベッドをどうやって作るの?」っと聞くと「羊3匹からできるよ!」と聞いてびっくり。

おそらく開発者はアメリカ人ではないだろうと思って調べてみると、、

開発者のマルクス・ペルソンはスウェーデン人。やはりといったところです。。




ウールやダウンを使った寝具の起源は一説によるとバイキングと言われていて、

彼らは動物を食べた後の毛皮や絨毛。ダウンなどを生活用品として使用し、

余ったものは他国との貿易にも使用していたそうですね。


これは私の推測ですが、天然素材の寝具においてはプロテスタント圏に多い印象です。

ドイツやデンマークや北欧諸国。一部異なりますが隣国のオーストリア、スイスなど。

自然を大切にして、その土地から得たものを余すことなく使う伝統があるように感じます。



ヨーロッパの家具といえば、イタリアですが、カトリック国においてはもう少し近代的な寝具が多く、

歴史通りにアメリカに渡ると大量消費文化。彼らが生み出したスプリングマットレスなどは

その象徴のような存在に思えます。



別にそういったものを毛嫌いしているわけではないですが、人間の睡眠に本当に必要なものは何だろう、、、

っと調べていくとどうしても当たってしまうのは「歴史」と「日本人の特性」だったのです。

その他でもその土地の農業や酪農、特産物などを調べていくと、ここも繋がってくるので面白いです。



話はズレにズレていきますが、現代のウールの歴史は16〜17世紀まで遡ることができ、

現在の寝具としてのウールパッドは19世紀ころから作られているようです。

特にビラベック社はすでに100年の歴史を持ち、100年間その製法を変えていません。

機械やシステムは進化しますが、そのマインドは今の世代にまで引き継がれています。

日本では18世紀後半でようやく綿花が登場しますから、その違いは歴然。

そう、日本人は今の環境や、当たり前を当然と思い込んでいますが、

世界的に見るととても特異な文化だということが分かります。


寝具は歴史、歴史は文化。文化とは人の営み。

人の生活に寄り添い、人の無意識の領域を拡張する寝具。

これを扱っているんだという自負があります。


夏こそウール!話はここだったんですが、、笑

お試しいただければと思います。



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