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2023/08/04 19:34

始まりは今年の年明けでしょうか。
1通のメールからでした。

当店でもかなりマニアックなベッディングシステムを備える
オーストリア製のRELAX社の寝具についてお問い合わせがありました。



そもそも、RELAXは私が初めて渡欧した際にドイツの展示会場で見たことが始まりでした。
彼らの展示ブースを見た際に他のメーカーと全く違う考えを持っていることを察知しました。

私はお取り引きを開始したり、
一緒にお仕事をする際に必ず何項目かを共有できることを
念頭に置きながら仕事を進めていきます。
それぞれに「自分の仕事が好きかどうか」ということです。

これは今までに経験をした中だけのことなので絶対とは言えませんが、
寝具を含む家具業態。家も車も同じなのですが、
金額が大きなものを動かす際に必ずしも出てくる人たちがいます。

「自分の仕事よりも対価や評価が好き」という方達です。
決してこれがダメというわけではなくて、そういう考えもありますし、
日本はアメリカ式を採用した資本主義の国ですから。
その方が一般的なのかもしれません。

今話題になっている企業もそうだと思うんですが、それが企業の体質や
人に対しての考えに繋がると思っているので、その方たちが作る商品・作品にも
その考えが表出してくることを私はなんとなく察知しています。

私の訪れたフランクフルトメッセで開かれていた超巨大な展示会は
大きな展示会場が10個以上連なっている世界最大規模の会場です。
ゆっくり商談をすればおそらく会期中の2〜3日ほどは要してしまいます。
*ハイムテキスタイルという展示会です。



ベッディングコーナーは一部ですが、私は全体をさっと2時間ほど見て
以前から行きたかったフランクフルトの美術館に行くことを優先しました 笑

これはアパレルのバイヤーだった頃から培われてきたものと、
先輩バイヤーたちがどうやって買い付けをするのかを横で見ていたからと思いますが、
その会社の人と話す前に商品を見れば、大体どんな企業風土を持っているか
どんな考えを持っているのか、なんとなくではありますが分かってしまいます。

なぜなら、その商品にコストがどのくらい掛かっているかは、
原料の密度と製造方法を基にして、算出した際になんとなく想像できます。
工場から生産者の周りに居れば、どのくらいの工程を介しているのかも
どのように価格を決めているのかも何となくは分かってしまうからです。

*普段からそんな風に商品や製品を見ていますから、
 一部の方からはかなり嫌がられますよね 笑
 (私が得意なのは繊維や生地の世界だけです)


 
理解することを止めないことが、まさかこんなことに繋がるとは
今になって良かったと思いますが、元々の私の性質が活きることは
これだったんだと今更ながらに感じています。


ようやく話は戻りますが、今回ご依頼を頂いたご夫婦の奥様も
どこかでこのRELAXの寝具を見られた際に覚えていたそうで。
お家を新築した際には絶対にこの寝具を入れるんだと決めていたそうです。
見た時にそれが分かるほどのものというのは、人の力が詰まっているものだと思っています。

奥様も実際に見られたことはなかったそうですが、彼らの作る製品に魅せられた一つの要因は
きっと私が感じとったことと同じことだったのだろうと思っています。

お話をする中で、導入に際しては早い時点でこのRELAX社の商品を基準に
ベッドフレームから最適なものをご用意することにしました。



今回はスノコのない、落とし込み専用フレームをご用意することになりましたが、
RELAX社で取り扱うヨーロッパ製のベッドフレームは1台が20〜30万円以上のお値段になってしまいます。

見た目としても寝具が部屋の中心になり、日本建築の中に入れてみても
洋館の様な内装や外観を備えていないと寝室だけがかなり華美になることから
若干の落とし込みのある既存のベッドフレームに載せて使用していました。

しかし、ベッドフレームに関しても今回はご予算をいただけるとのことで、
国産の天然乾燥材のヒノキを使用したオリジナルの
RELAX2000専用ベッドフレームを作成することとしました。

私の知り得る中で2〜3軒の工場を選定し、同じ設計図を入れて見積もりを取ったところ、
そのほとんどで現実的に作成不可であることを知りました。

様々な理由はありましたが、その大きくは価格です。
国産材と言えど、やはりコストが跳ね上がっており当店で販売の出来る
クオリティと価格のバランスを満たすものではなくなってしまいました。

そこで、頼りになる寝具界の先輩方にお伺いをすることとなりました。
その中のお一人からご紹介いただいたのが今回の工場となります。



場所は金沢。
北陸の工場さんとは初めてお付き合いしますが、
前職で土地勘もありましたし、豊田から行きやすいこともあって
まずは工場見学に向かうこととなりました。

アテンドいただいた方にも関西から動向をいただき、
まずは工場と製品を見て今回作成できるものと、内容を決めていこうと思っていました。

粗方のことが決まっていき、5月末。
1度目の工場見学をする為に工場を訪れました。
事務所で商談をする前に最初にびっくりしたのは香りでした。

入った瞬間に人工乾燥にはない豊かなヒノキの奥行きのある香りと、
無垢材の素材感と肌触りにすぐに依頼を決めました。

「これは木を好きな人たちが作っている」
そう確信したからです。



その瞬間に私の持っているイラストと、簡易な設計図のみを渡し、
後の細かな調整は全てお任せするものとしました。
私があれこれ入っていって、つまらないものを作ってしまう恐れがあると瞬時に感じたからです。

信頼のできる人とできない人。私の中では明確な違いがあります。
その人の手の中で転がされているという感覚なんですが、
私は波の上でふわふわ浮いているだけなのに、とても気持ちの良い仕事を
してくれる方々がいつも私や商品やお店を支えてくれているのです。

そういう意味ではお客様も同じで、今回のように大枠だけしっかり決めていれば
後は任せていただける方が多いので、この仕事を初めてからというもの
大きなストレスを感じたことがありません。

いい時、悪い時。今回のコロナのように、どうしようもないこともやってきます。
それでもお互いが手をつないで、一緒にふわふわしてくれる人たちがいてくれます。
その人たちが喜んでくれる姿を想像すれば、私が手を抜いていいはずなどありません。

私はまだ40代ですが、仕事とはそういうものだと感じ始めています。
時間を切り売りすれば、お金はもらえます。
ただ、その先に出来上がったものと、今回のような方にお任せしたものと
形は一緒でも結果は大きく変わってきます。

それは納品後かも知れませんし、10年後かも知れませんし、
私達がいなくなってしまった後かも知れません。

私はモノを介してヒトの想いを伝えていく立場にいるだけですが、
短い人生の中でも気持ちの良いプロダクトがどう派生していくのか
何となく結果を見させていただく機会が沢山ありました。

やはり人の熱が詰まったものの方が、良い結果に結ぶつくことを見てきました。
ただそれだけなのです。



あと、言うなれば自然のものは人間の言うことを聞きません。
無垢の木材は時に曲がり、ひび割れ、変色し、たくさんのリスクを孕みます。
ただ、良い素材を知っている人はそれで良いということを知っています。

時間をかけてよい加工を行えば、その先で使う方が永続的に使えるような
メンテナンスができるようになりますし、何より無機素材にはないその効果効能で、
リスク以上のものを受け取れる可能性があります。
当店にとって言えば「熟睡」ということです。

見た目や肌触りを含む心理的な安心感もありますが、
天然素材は人間の睡眠にとって1番の大敵である湿気を調節して、
人が最も眠れる環境に整えてくれます。

今回は天然乾燥のヒノキを使用しているので、
その中に含まれるヒノキチオールという成分が
リラックス効果を産み、より良い睡眠の時間を補助してくれます。

これは天然の油分に含まれるもので、人工香料にはその効果効能はありません。
また、人工香料は壁紙やカーテンなどに一度染み付いてしまうとなかなか取れませんが、
有機物である天然精油はいつかは消えて無くなってしまいます。


それを引き出すために、製作者は目には見えない努力をしています。
天然か人工か。その判別が難しい時代になってきているので
エンドユーザーもどちらでもいいと言えてしまいますし、
素材を良くすれば、なんせ価格が倍に跳ね上がってしまう訳ですから、
それを売価に反映せずともよい販売環境を持っていることも必須項目となります。



詳しく言えば、CMを含むような広告宣伝費を価格に転嫁してしまった場合は
こういった性質の商品は販売など成り立たなくなってしまいます。

生産者と販売者は正当な利益を付けて販売する訳ですが、
広告宣伝費を利益に乗せて販売しなくてはいけませんから
元々我々が、扱うような製品はそもそもCMなど打てるはずもありません。

これは個人の感想ですが、、
なんとなく暴利を得ているものほど売れる世の中になっている気がします。

マーケターとして働いていたこともありますから。ここははっきりと言います。
CMが打てるものはそもそもの原価(コスト)が安いものでないと成り立ちません。
一定の幸福感を満たす商品であれば良い訳であって、
それ以上の五感を満たすものではないということです。

また話が飛躍していますが、、笑
今回仕上がったものを見ていきましょう。


今回はヘッドボードの付いているタイプをご希望でしたので、ヘッドボードの高さも調整しながら。


深い落とし込みの付いた機構がRELAX2000の機能性を高めてくれます。


RELAX2000をはめ込むとこんな感じです。まさにぴったり!!


ウッドパーツが360°動いて人の体を曲線で捉えます。


ラテックスマットレスは同じ RELAX社のシルバーネス14cmをチョイス。

サイドから見ても仕上がりが綺麗です。


ラテックスの上にはウールパッドを。人が眠る上で、気温や湿度の熟睡条件を整える役目があります。


ウールパッドにはRELAX社のロゴが入ります。



ご夫婦にオーダーまくらを現地調整させていただき、設置終了です。
全て合わせるととてつもない重量になりますが、フレームを滑らせて移動させることもできます。


メンテナンスはカバーを洗うことを基準にして、ウールパッドは2〜3年に1度洗います。
マットレスはこの様に折っていただくと湿気を逃がすことができます。

今回は良いお客様との出会いで、良いチャンスをいただき
私のできることの拡張と感覚を高めることもできました。
ご依頼のあったお客様、誠にありがとうございました。
引き続き何かございましたらご連絡くださいませ。



前日のブログにも書きましたが現在の店舗は8月27日(日)で一度閉店します。
来年2024年初春に向けて再オープンの準備を進めていきます。
無店舗期間もご依頼はお受けできますし、その方法もお客様のご希望の方法で
打ち合わせをさせていただきながら寝具設置を進めていきます。

分からないもの、ご質問などございましたらメール・お電話などでご連絡ください。
よろしくお願いいたします。



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