前回のブログの内容でオーストリア製の寝具、
RELAX社の寝具を納めるためにベッドフレームを作成することとなりました。
見学・打ち合わせと、出来上がった製品のチェック、
また引き取りのために2度ほど金沢を訪れることとなりました。
以前から行きたかったスポットがいくつかありましたので
この2回の機会に全て回ってしまおうと思い、1度目は金沢より南部側を。
2度目は金沢より北部を回ることとしました。
①加賀片山津温泉 総湯
ご存知の方も多いかもしれませんが、谷口吉生さんデザインの公共施設。
地元の方も多いと聞きましたが、この日は残念ながら休館でしたので中には入れず。
片山津温泉自体はバブル期に開発されたリゾート地で、多くの旅館があったようですが、
現在ではこの総湯を中心にして街が形成されているように感じました。
廃墟のような旅館跡が何件も続いた先に見えてきます。
柴山潟の対岸にはゆっくりできそうなリゾートホテルが見えました。
目の前で営業をされていたコーヒースタンド(mie coffee)で休んでいると店主の女性に
「どこからおみえですか?」と話しかけられて、「愛知です。」と言うと、
中谷宇吉郎 雪の科学館をご紹介いただきました。磯崎新さん建築の建物が見られるとのことで
そちらを見学に。
②中谷宇吉郎 雪の科学館
こちらも90年代初頭の建物ですので、その時代の公共事業感が強い施設でした。
裏手に回ると、ここからも柴山潟の綺麗な景色が楽しめます。
谷口建築でお風呂を入れると算段して朝方から出てきたのですが、
休館ということを知らなかったので、どうしても温泉に入りたいと思い。
少し足を伸ばして山代温泉古総湯に。写真はありませんが、
道後温泉のような作りになっていて昔ながらの共同浴場の作りになっています。
画像は観光協会さんからお借りしたものですが、
当然ながら通常お風呂の中の写真は撮れません。
江戸時代は家にお風呂がない家庭が多かったので、今のような銭湯ではなく
男女の区切りもないような大湯というのが一般的だったと何かの文献で読んだことがあります。
今ではしっかり区切られていますが、恐らくここも男女の仕切りが曖昧だったのでは?
と思うような作りになっていました。脱衣所が風呂の横に直接付いていて仕切りはありません。
なるべく軽装で行かれることをお勧めします。冬は大変かもしれませんね。
蛇口や流し場もないので、湯船から直接掛け湯して頭と体を洗って入浴します。
原始的な共同浴場を楽しむことができました。帰りに温泉卵を食べながら次のポイントへ。
私はかなり好きな温泉でしたが、人との距離感が近くなるのでパーソナルスペース広めの方には
総湯の方がおすすめかもしれませんね。
これは余談ですが、先日別件で、小松市の「壱」さんという居酒屋に行きました。
地元の方に連れて行っていただきましたが、季節の美味しいお料理をいただくことができました。
野々市市の旧街道沿いにある国指定重要文化財の住宅です。
元々は武家ですが、江戸時代には油屋として、その後酒蔵として使われていた建物です。
元々あったお屋敷は火事で燃えてしまい、現在の建物を移設して使っていたそうです。
今回の旅の一番の目的はこの喜多家住宅でした。
金沢は木材でも有名な街ですので、木の質量がずっしりしていて、
素材感の強い造りになっています。それを扱う大工の腕も相当なものだと推察します。
天井を見上げると囲炉裏を中心に、木組みの綺麗な高い吹き抜けを見ることができます。
これはなかなか見ることができないと思います。当時から相当な豪商であったことでしょう。
囲炉裏に描かれる模様は喜多家に代々受け継がれてきたもので、当主の方が毎日書いていたそうです。
今は子孫の方も市内におらず、屋敷ごと市に寄贈されていますので管理される市職員さんが
喜多さんから教えてもらって交代で書いているようです。
この建屋の奥から住宅側にも回れて、靴を脱げば2階にも上がれます。
修繕をしたくとも予算がない様子で、住宅側はかなり老朽化しています。
当時のように手入れがされていれば相当お庭も綺麗だったのではと思います。
館内は割と自由に見て回ることができます。
縁側に腰掛けて当時の方と同じ目線でしばらく風景を楽しんでいました。
街道が栄えていたのでしょうね。
どこを切り取ってもずしっと思い素材の密度と重量感が感じられます。
ぼーっとしていると当時の人の声が聞こえてきそうです。
型染めだと思いますが、この暖簾も当時のものです。
同じデザインが何枚かあったので、当主が気に入っていたのでしょうね。
濃い藍色にフリーハンドのラインがとても良いバランスで配置されています。
期待していただけにとてもよい建築でした。
古民家マニアというわけではないですが、当時の人の生活を感じる上で
家から当時の日本の気候や、生活様式。文化を探るヒントがたくさん詰まっています。
普段は解放していない台所と水汲み場も見せていただきました。
現在は倉庫として使用しているようでした。
④鈴木大拙館
ここは有名ですので、言うまでもありませんが、谷口吉生さん父である
谷口吉郎さんの生家のある金沢は谷口建築が多く、その中でも代表的な建築です。
金沢の街中にありますので、パーキングに車を停めて歩いていく必要があります。
駐車場はありません。
この日はカモのつがいが水浴びに来ていて、閉館まで自由に泳いではふわふわとしています。
館内のスタッフさんも珍しいことのようで、写真や動画を撮っていました。
駆け込みで入ったので1時間ほどで全てを見させていただきましたが、
中央の思索空間ではどの窓から風景を見ても線の少ないシンプルな景色を楽しめます。
定期的に池の中からボコボコっと水が吹き出して音がするのみで、
もっと時間があればここに留まっていたかったです。
谷口さんの建築はどこから見ても中心が取れていて、
バランスの良いというのか、なんなのか。専門外の私には分かりませんが
細かなところにその性質が見られて、とても気持ちが良いのです。
人の意識の中で遊ばせていただいているのが、とても良い空間です。
わが町の豊田市美術館もそうですが、彼の意思がしっかりと伝わります。
次の日は朝からベッド工場でしっかりと打ち合わせをしてから帰路につきました。
帰りもどこかに寄りながら帰りたかったのですが、
午後から店舗でのお客様のご予約がありましたのでそそくさと撤収です。
その2に続く。