アレルギーの方は「寝具」に気を付けましょう。
と言うのが実は盲点で、ほとんどの方が掃除や洗濯、天日干しなど
「毎日のケア」を中心にお考えだと思います。
幼少期よりアレルギー体質が継続している方はよく分かると思うのですが、
自分が置かれている環境によって体調が変わってしまう事が普通で
子供の頃からそれに慣れていると大人になってからその異常さに気付いたりします。
私は小中と野外活動、修学旅行で泊まる旅館や宿泊施設などに行くと
喘息の発作や症状が出て、毎度思い出が台無しになります。
一緒の部屋で友達と過ごしたくても体調が優れず、
学校行事ではいつも保健室の先生と一緒の部屋でした。
今でこそ解るのですが原因は「綿布団」です。
不特定多数の方が使う大量の布団は毎回丸洗いのクリーニングなどに出されているわけでもないでしょうし、
日光に当てる程度のケアではアレルギーの原因の一つである
「ダニ」は消滅しません。
アレルギー疾患のない方には想像しにくいかもしれませんが
花粉やダニ、ホコリやタバコの煙、動物の毛など。
目に見えないものとの戦いになりますからアレルギーでない方からは
一見何に過敏になっているのか理解し難いと思うのです。
それも生活の基になる自宅が過去に最悪の環境であったことを
私はこの寝具の世界に入ってから気付きます。
現在こうやって素人から寝具店を開業したのも同じような方が
全国にはいらっしゃるだろうと思いこの店を開きました。
自身に寝具の知識や経験が付いてからは自宅をダニが繁殖しにくい寝具に
ゆっくりと見直しをかけてからはある程度体調をコントロールできるようになってきていて
毎日飲んでいた多種の錠剤や、子供の頃からお守りの様に持ち歩いていた
気管支拡張剤の吸入器から現在は解放されています。
私は2歳から小児喘息を発症。その後アトピー性皮膚炎
慢性鼻炎・蕁麻疹と両親にはない症状が次々と発症し、普段から出されている薬に頼るだけではなく
両親は針・灸・漢方薬や気功(?)と様々な民間治療にまで手を出し
それでも幼少期には完治はしませんでしたし、青年期に喘息の発作で2度ほど
呼吸困難になり低酸素状態で数日間の記憶が飛び気を失ったこともあります。
現在私も3児の父をしておりますが3人ともにアレルギー症状があり、
喘息・アトピーと、その性質をしっかりと受け継いでいます。
それぞれに症状は異なりますが、当然血液検査ではダニ・ハウスダストはMAXレベルです。
しかし私と同い歳の時の様な発作や皮膚炎などは出ていません。
予防薬などの薬が良くなったということもありますが
彼らも同じくコントロールが効くレベルに留まっています。
薬剤が昔に比べるとよくなったということもありますが、
私が寝具に関わるの仕事をする前から少しづつ寝室の環境を改善し、
今ではアレルギー対策の行き届いたものになったと自負しております。
自宅で使用する寝具の改善点は大きくは3つです。
①マットレスをダニのつきにくい「ウレタン&ラテックスマットレス」に変えた。
②羽毛布団を買い替え&リフォームし、「ゴアテックス側地」に変えた。
③羽毛布団1枚のみの暖かさで真冬も「化繊毛布」を使わなくなった。
アレルゲンであるダニの好む環境は
1)高温多湿
2)エサがある
3)隠れる場所が多い(暗所である)
この条件をどれだけ少なくできるかが勝負です。
強い薬剤加工などで寄り付かなくすることもできますが
生き物に悪いものが人間にとってもいいはずはありません。
薬剤によるアレルギーが出る場合もあります。
とはいえダニはどこにもいますし、薬剤を使わずゼロにするのは不可能です。
重要なのは薬剤以外の方法でダニの嫌う環境を作ればいいのです。
まず
①ウレタン & ラテックスマットレス
当店で扱うマットレスは全て「ノンスプリングマットレス」と言われる
バネ状のスプリングを有しておらず、また綿状の詰め物もない
ウレタンやラテックス素材からできている寝具をそう分類します。
廃棄する際に燃えるゴミとして廃棄ができ、構造上ダニがつきにくいものが多いです。
特にウレタンはホームセンターで売っているものから専門店で扱うものまで見た目に素材は同じなのに
値段が10倍以上も違う商品がたくさん出てきます。
はっきり言うと、、おそらく消費者にウレタン違いは分かりません。
見た目には分からない。
「密度」が関係します。
「耐久性 = 価格」だからです。
要は材料がたくさん詰まっていて、密度が高いかで耐久性と寝心地が決まります。
見た目は一緒のマットレスでも価格が違うのはこの為です。
価格差についてはさておき、アレルギーに関して言うと、
綿布団ように内部の繊維などに汗や皮脂が染み込むこともないので
エサも少なく、内部構造から移動も自由に行えないため
熱や光などの不快な環境からすぐに逃げ出せることもありません。
この点からダニに対しては繁殖しにくい環境になる訳です。
しかし人間がその上に寝る限りダニがゼロになる事はありません。
限りなく増殖し易い環境を作らない事が重要です。
もう一つはラテックスマットレスです。
比較的高単価なものが多く、日本では流通量が少ないです。
なぜなら天然由来の原料である為、国内生産が無く輸送費がかかります。
原料も木から滴る樹液を集めて作成する為、高単価です。
しかしこの樹液には虫や菌の嫌がる成分が元々に素材に含まれています。
高い抗菌成分を誇るラテックスはダニの好む一部の細菌類を
寄せつけにくくする為、ハウスダストアレルギーの方には
非常に向いていると考えています。
しかしこの抗菌成分はうまく処理しないとマットレス自体が強烈な匂いを発します。
中国製のラテックスの一部は非常に安価ですが、
匂いがあがるものが多く、そもそも寝ることが困難です 笑
特にヨーロッパではラテックスの市場規模が大きく、ポピュラーな素材です。
その為処理技術能力が高く、匂いがあがるものは少ないと思います。
当店のラテックスマットレスは全てマレーシア生産でヨーロッパ企業傘下の
日本企業が生産コントロールしている為、匂いはほぼありません。
ただ、羽毛布団と同じく、ネット通販などでお買い求めになる際は
「匂い」については記載されていませんので
気を付けていただいた方が良いかと思います。
構造上でもウレタンと同様にエアセル構造になっており、
ダニが自由に行き来できないことと、
餌になる人間の皮脂・汗・髪の毛などが内部まで
入り込まないので繁殖しにくい清潔な環境だと言えます。
②ゴアテックス羽毛布団
ゴアテックス自体をここで詳しく説明するとかなり
長くなりますのでまたいつかお話し差し上げます。
現在日本でゴアの布団を扱えるのは3社のみ。
当店はそのうちの2社の商品を扱えます。
なぜそんなに少ないのかというとゴア社の要求する素材や資材。
それを縫製する機械と技術を保有し、
年間の生産も安定して行える工場に限られているためです。
やりたくてもできない工場が多く存在するということですね。
特に衛生面でも基準が高いものになりますので、
設備投資をクリアできる工場が少なくなることは必然かと思います。
ゴアテックスを大まかに説明すると、生地の裏に
人工透析に使用する様な皮膜を特殊な方法で圧着させるのですが、
皮膜の隙間がダニより小さい隙間しかなく物理的に入り込めない構造になっています。
*イメージ図
そしてダニだけでなくもっと小さなハウスダストや花粉。
汗・皮脂、ニオイの元である粒子ですら通れないというものです。
熱や水蒸気だけを通す性質があり、人間から出る余分な
熱や水蒸気は中で蒸れることなく外に放出されるというものです。
当然、水蒸気のみを通過させますので中の羽毛は
汗や皮脂で汚れませんし、匂いもつくことがありませんから
細かなクリーニングの必要もないということになります。
ただ表面は綿素材ですからここだけは汚れが付いてしまいます。
外からの汚れに対しては一般の布団と同じ様にクリーニングを
かけていただければいいので、こまめなメンテナンスからも解放されます。
世に出ているダニ対策寝具のうち、そのほとんどが
一般的な側生地の目を潰す「樹脂加工」です。
ゴアと同じラミネートという処理になりますが、浸透膜ではないために
皮膜面が厚く、ごわついてしまいますし、
コスト的に天然繊維で作ることが難しくポリエステル生地、
またはポリエステル混生地に樹脂塗布するものがほとんど。
実際に使用すると熟睡環境とはほど遠い「蒸れ」が発生してしまいます。
もっと細かいことまで言うと、、、生地からは入り込めませんが、
ミシンで縫った際に針が通った穴からダニは自由に侵入できていしまいます。
ゴアテックスのベッディングプロダクツシリーズは縫い目の裏に
特殊なシームテープを使用しており、針が抜けた後の縫い目に
一つ一つシームテープを当てて全て塞いでしまいます。
これは防水機能で培われた技術であり、シームテープひとつとっても
ゴア社が認めた資材でないとゴアテックス商品の認証は貰えません。
そういった意味で作りたくとも作れないという工場が出てきます。
ゴアテックスのウェアをご存知の方はバキバキのシェルを想像されるでしょうが、
アウトドアで使用するアウトドアラインとは全く仕様が異なります。
驚くほどなめらかな生地感で、ゴアと知らなければ圧着生地が付いているとは
思えないほどの肌触りと軽さを持っています。
薄くて耐久性もあり、表地素材に綿やテンセルも使用できますから
肌触り寝心地も良いお布団になります。
それでは全てにゴアを使えばいいじゃないかと思われますが、
使用されているのは耐久性の面から今のところ掛け布団のみです。
ただ残念ながら一般のお布団に比べればかなりのコスト増になりますから
ここはデメリットです。
ただ10年20年前の状況とは変わってきました。
ゴア羽毛布団と聞くと1枚20万円以上していたお値段ですが、
現在店頭にある羽毛布団も中身の羽毛をダックに抑えていただければ
最低が8万円代からとお値段も落ち着いてきました。
当店では新品のゴア羽毛布団で作成することも可能ですし、
リフォームでお手持ちの布団をゴア生地のお布団にすることも可能です。
小さいお子様がアレルギー症状に苦しんでいらっしゃるご家庭には
ぜひ採用頂きたいお布団です。
動物アレルギーなどをお持ちの方の中には
羽毛布団自体が使えないと思われている方もいらっしゃいます。
そういった方にもぜひ暖かいお布団をご体感していただきたいです。
③化繊の毛布について
そして最後に盲点なのは、、、「毛布」です。
特にポリエステル100%の毛布は寝具としてお使いいただくのは
アレルギー体質の方にはお勧めできません。
一度お手持ちの毛布の組成表示をよく見てみてください。
同じく冬に使用される「敷き毛布・敷きパッド」も同じことです。
ポイントだけ先に申し上げておくと
「静電気」です。
近年は安価に製造ができる化学繊維が繊維のほとんどを占め、
身の回りの中にも気をつけていないと全てが化繊になってしまいます。
私が単に化繊を全否定しているわけではなくて
「知っていて使っている」と「知らずに使っている」
には大きな差があり、適材適所がある訳です。
1日ずっと肌に当たる肌着では
皮膚科に行くと化繊の肌着を使用していないか確認されます。
肌を清潔に保つ為、汗や水蒸気をしっかり吸う綿100%のものを
使用するようにと言われますよね。
逆に山や海で雨や雪、暑さ寒さなどの過酷な環境で使うには
現在ではやはり化繊が主役です。
丈夫であり、早く乾いて、雨風の侵入を防ぐなど恩恵は沢山あります。
しかし寝具は1日24時間の内の約8時間を共に過ごすものです。
そうなった時に何を使用するかもう一度考えて欲しいのです。
体が嫌がる湿気を素早く吸収する必要があるためです。
そして、専門店がいう寝具としての「毛布」は
化繊でもアクリル100%以上のものを指します。
しかし国内のアクリル毛布の生産量は2〜30年まえの半分以下
という事になっていますから状況はご想像の通りです。
量販店で売られているポリエステルの毛布に押され、
ウール毛布の時代からアクリル毛布を生産してきた泉州地区では廃業が相次ぎ、
国産毛布の存在さえ危ぶまれています。
羽毛布団の普及率が上がってきた事も追い打ちになっています。
寝具としての国産アクリル毛布は静電加工がかかっているものが多く、
静電気の発生が少なく、繊維と繊維の隙間が大きいので空気が滞留し暖かく、
ポリに比べ水蒸気も保持できます。化繊毛布の中でも比較的お勧めの素材です。
ただ当店ではアクリルも含む化繊毛布は取り扱っておりません。
あるのは動物性繊維のケットやウールブランケットです。
これは化繊に比べ帯電も少なく、特に獣毛やシルクは呼吸をしていますので
水蒸気を吸ったり吐いたりして蒸れのコントロールをしてくれます。
これが安眠に結びつく秘訣なのですが、目に見えない効力を知らない方からは
高いから・・・簡単に洗えないから・・・
と倦厭されてしまい、今では専門店さえも取り扱いを縮小しています。
比較的日常に近い洋服も同じですね。
大型量販店ではウール100%のニットを探す方が大変です。
手入れが大変と言われ追いやられている現状です。
お若い方はウールが何の毛なのかご存知でない方もあるとか・・・
着たこともないものを買うということはあり得ないと思うので
やはりこういった地道な活動が必要なのだと感じています。
話がずれているので元に戻すと、
先ほどからお話し差し上げている「静電気」で一番怖いのは「ダニ」。
彼らは生きている時にはほぼ無害なのですがフンや死骸が乾燥し、
細かく砕けてしまうとこの静電気で毛布に引きつけられてしまい
アレルギー症状の原因となってしまうという事が考えられます。
家中のホコリ・ハウスダストを静電気で一番吸い付けてしまう寝具は
ポリエステル製の毛布、起毛敷きパッド、起毛あったかカバーです。
敷きパッド然りですので、一度お家で使われているものをご覧いただきたいです。
その中で寝ることになりますから想像しただけで・・・
という事になります。
話は変わりますが、
TVなどで「毛布は布団の一番上に重ねて蓋をしましょう」
と言いますが、これは化繊毛布のことです。
できればお手持ちの毛布のタグをごらんください。
特に天然素材の毛布やケットを外に出してしまうと
あまり意味がなくなってしまいますから
天然素材は布団の内側。化繊は外側。と覚えておいてください。
先日店頭にて真綿(シルク綿)布団を外にしている
と言われた方もいらっしゃいました。
それだけにメディアの発信力は強いのだと再認識しました。
現在私はアクリル毛布も使用しなくなってしまいました。
羽毛布団を出さなくても良い微妙な時期はキャメルケットを
ウールorキャメルベッドパッドで挟むか、冬季でも
薄めの羽毛布団だけで十分暖かい環境を得てしまったのです。
主にアレルギー対策で始めたつもりが、結果的には総合して
体圧分散や寝床内気候まで改善する組み合わせになってしまいました。
アレルギーの方は特にですが、肌に直接触れるものは天然繊維で
肌を清潔に保っていただきたい為、カバーや敷きパッドに至るまで綿やリネン、
その他の天然繊維を使用いただきたいです。
一般的な対策ではダニ収集剤や布団専用掃除機など。
今ある寝具に駆除の方法を考えることがほとんどですが、
元々から「増やさない条件を備えた寝具を最初から使用する」
というのが寝具専門店の答えです。
やはりその他の機能が高い分、多少お値段は張るものもありますが、
私の場合など通院費は一時1ヶ月に1万円を超えていましたから
それ考えるとそう高いものでもありません。
1万円 × 12ヶ月 × 10年ではなんと120万円ですから
これで深い睡眠まで得られることを考えるとお釣りがくるほどです。
私は小さい頃から喘息とアトピーに苦しめられ、
特に運動ができず、ひ弱でしたので
小さい頃は運動部に入りたくても入れませんでした。
そういった思いを自分の子供にはさせたくないと思い、
この世界に飛び込み前から少しづつですが寝具を買い揃えてきました。
元々寝具が好きだったこともありますが、それが今では店舗を持つまでに変化しています。
同じ症状に苦しむ方に「寝具」でお役に立てるのではないかと思い
少し変わったラインナップではありますが、国内外問わず、沢山の寝具の中からセレクトをしております。
これだけ書いてもまだまだお話しできることはありますし
その方の症状のケースによって違うご提案になる可能性もあります。
中身の見えない寝具なので、それをできるだけわかりやすく、
楽しくお伝えできるよう日々考えながら店頭にてお待ちしております。
また何かご相談がありましたらぜひオンラインでの寝具無料相談も
こちらまでお気軽にご利用ください。
メール・お電話でのご相談も常時受け付けております。
メンテナンスの仕方によってもアレルギー対策できるものはありますし
ご家庭の環境によりケースはかなり変わってくるはずです。
お布団の保管法など些細な事でもご相談いただけますと幸いです。